ある程度出世して後輩の面倒を見たりプロマネのポジションをやるようになると、評価項目の中に「後輩の育成」が加わってきます。この後輩育成のカルチャーはどちらかというとチームで動くことの多いコンサルに特に強いです。(逆に投資銀行や投資ファンドではやや優先順位が落ちます。)
個として立派なプロフェッショナルとして仕事をしていたとしても、誰も後輩が慕わず、孤立してある領域の職人としてしか生きられない人もいらっしゃいます。今回は、後輩の育成について考えましょう。
残念な部下の上に残念な上司あり
「うちの若手は全然ダメなんだよ」と部下の出来が悪い事を嘆く管理職の方がよくいます。部下の出来が本当に悪くてどうしようもない事もあるでしょうが、それをいきなり決めつけてはいけません。
「こうやってやるんだよぉ」と仕事が出来る様子を実際に見せましょう。
ハードスキルでもソフトスキルでも圧倒的な差を見せつけると部下の見る目がかわります。部下がダメだと思っているなら、自分が「すごい!」と思ってもらえる仕事っぷりを見せられていないだけです。人のせいにしないで自分に原因が無いかを考えましょう。
具体的な仕事っぷりを見せて若者が育つ事例
このテーマに関しては具体的な話から判断した方が早いので、事例を幾つか紹介しましょう。
某中国系グローバル企業での事例
元々はある米系の企業の一部門で中国系資本が買収した某企業(勘の良い人はどこかわかったかもしれません、きっと正解)で働く知人に直接聞いた話です。
その企業はグローバルに製造・販売拠点を持っていて、国際色豊かな人材が働いています。同じチーム内に同じ国籍の人が1人もいないなんてザラで、日本の伝統的な大企業の村社会とは真逆の世界がそこには開かれております。そんなグローバルチームで働く人の中には「俺はスゴイ」感が強く、鼻持ちならない自称グローバルエリートの一癖も二癖もあるある人達が多く集っています。
中には、上司を舐めて「俺こそが世界最強!」と勘違いしている血気盛んな若者もいて、上司の言うことを聞かずオレ最強を信じてやまないおめでたい方もいらっしゃるようです。そんな血気盛んな言うことを聞かない若者に言うこと聞かせるには、仕事で圧倒的な力量の差を見せつけることがもっとも効果的だそうです。
「XXXの顧客に対してこんな仮説が成り立つから、この視点でデータをちょっと見てくれない?」
と指示を出しても
「それは、XXXであまり意味がないのでは、しかも投下時間の割に得られる効果が少ないような気が、、、」
とゴニョゴニョ言ってなかなかいう事聞かないので、
「具体的にこうやって作業するんだよぉ、ホレッ!!」
と具体的に自分でエクセルをぶん回して目の前で作業して見せたそうです。いつも偉そうに指示出しているだけに見えた上司が実は圧倒的に自分よりもスゴイスキルがあって、高速で仮説を検証し、仕事をブン回してく様を見せつけられてから言うことを聞くようになったとの事です。
野村證券第二事業法人部の事例
「住友銀行秘史」「バブル:日本迷走の原点」と並んでバブル三部作との呼ばれている本作品の中にも作者である横尾宜政氏の実体験として、上司の働きぶりを見て部下が育っていく描写が描かれております。
私が浜松支店にいた時には面白い事象が起きた。オムロンのワラントで私が月間1億円、2億円とコミッションを稼いでいると、若手営業マンが急に稼ぎ出したのだ。その時は浜松支店の1年目、2年目、3年目を中心に、中部圏の月間コミッション上位10傑のうち、浜松支店が9位までを独占した。若手を育てるには、実績のあるプレーイング・マネージャーの存在が不可欠なのだということが、身に沁みて分かった。
出所:野村證券第二事業法人部 第7章 さらば、野村證券
某ゼネコンで現場でのやんちゃな職人との話
某ゼネコンで働いていた知人から聞いた話です。
ゼネコンでは、現場の職人さんに働いてもらってはじめて具体的に建設が進んでいきます。しかし、大学卒のゼネコンスーツ組の方と中卒・高卒の多い現場の職人さんとの間にはカルチャーのギャップがあり衝突することが多々あるそうです。ある日、職人さんと衝突したけどどうしても作業を進めたかったので、仕方なくやんちゃな職人さんと力比べ(力比べの具体的な内容はここでは伏せる)をすることになったそうです。その力比べで職人さんを圧倒し、決定的な力の差を見せつけた所、職人さんが指示を聞いてくれるようになり二度と歯向かうことはなかったようです。リアル・サラリーマン金太郎ですね。
そのゼネコンの方は、体育会系の柔道部出身で実際に凄い体をしていて、これまでの経験から絶対に負けない自身があったのでしょう。
(この事例はちょっとちがった?)
まとめ:部下の出来が悪いのを部下のせいにするな。あなたがダメだから部下がダメ
「勇将の下に弱卒無し」という諺があります。
勇将の下に弱卒無し
【読み】 ゆうしょうのもとにじゃくそつなし
【意味】 勇将の下に弱卒なしとは、上に立つ者が優れていれば、その下につく者も優れているということ。
出所:故事ことわざ辞典
どんな時代でも、どんな民族・国家であっても強い兵士は弱い将軍には従いません。時代と国境を越えた組織における人間関係の真理です。そして、言うことを聞かない、生意気な部下を作り出しているのはあなたです。「ケミストリーがあわない」とか「最近の若者はダメ」と言わずに、自分に原因がないか考えてみましょう。心当たりがある方は、きっと自分の仕事を認められてないし、舐められています。
シニアな管理職になっても「仕事っていうのは、こうやってやるんだよぉ!!」という具体的なアクションをたまには若者に見せて「おお!すげぇ!」と思わせてあげてください。学びたい気持ちが無い人なんてそんなにいないんですから、若者の態度は変わりますよ。
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逆に大人しい部下やチームメンバーがいたらこちらも参考にしてみてください。
大学卒業後、ファンド・コンサルで10年以上働いて独立しました。今は、個人でコンサルやりながらニッチなメディアの運営を行っております。詳しいプロフィールはこちら。
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