こんにちは、taikiです。
PEファンドの話題がタイムラインにあがってくると、「遠い昔、私もその世界で働いていたなぁ」なんて懐かしく思い出すことがあります。
そんな中で「PEファンドは上が詰まっていて人材の新陳代謝が悪い」みたいな話をたまに見かけるのですが、ちょっと残念な気持ちになってしまいます。
PEファンドはLP投資家が「このチームに出資してみるか」と考えて出資するから上が詰まるのは当然。そもそも上はキーマンだし。PEファンドでの出世とはLP投資家に認められて「○○出身者が立ち上げたファンド」を持つことで、上が詰まっているというサラリーマン的な発想は向かないビジネスだよなぁ。
— taiki (@taiki_chk) March 1, 2021
ファンド内部の方は当然理解しているのですが、これからPEファンドを目指す人に正しく理解しておいてほしいなぁと思いましたので、「上が詰まっている」様に見える理由と実はそうじゃないという話を書いておこうと思います。
これからPEファンドを目指す人はぜひ、この話を理解した上でサラリーマン的な発想を捨てて大きく羽ばたいてください。
「そもそもPEファンドって何?」という方は、こちらを先に読むことをおすすめします。
PEファンドの上が詰まる構造的な理由
PEファンドにおいて何年もマネジメントチームが変わらず、外部の人から「上が詰まっている」状態に見えることもあるでしょう。
しかし、運用期間が10年に及ぶようなPEファンドやVCファンドの場合は、「誰が10年コミットして運営するのか」は重要であって、このあたりに「上が詰まる」理由があります。
そもそもキーマン条項で縛られている
「上が詰まっている」ことの大きな理由として、ファンド出資者(LP)とファンド運営者(GP)の契約でキーマン条項が組み込まれていることでしょう。
キーマン条項とは
ファンド出資者(LP)とファンド運営者(GP)の間で「○○さんはやめたらダメ。辞めちゃったら契約は無効です」みたいな約束ごと。M&Aの契約でも「買収完了後○年は社長とXXさんはやめちゃダメ」といった感じでよく見かける。
出所:俺調べ
「XXが100億円のファンド設立!」みたいなプレスリリースを見かけることがありますが、100億円のファンドを設立したといってもそのファンドを運営する会社の銀行口座に100億円があるわけではありません。
投資を実行する際に、出資者から必要な分だけお金を払ってもらいます。その総額が100億円あるというだけです(※1)。
ファンド運用期間中にキーマン条項に抵触したら、途中から投資するお金を出してもらえなくなります。そして、そのキーマンはファンド代表者やパートナーがなるわけで、簡単にやめることは出来ません。
そうなったら「上が詰まる」のは当然ですね。
しかもPEファンドやVCファンドは運用期間10年と長期に渡ります。3年ズレて違うファンドが組成されたら、改めてキーマン条項がついてキーマン期間は更に長くなります。
※1
正確には、管理報酬があるから100億円は全部投資に使えるわけではありません。
ファンド出資者から見た「上が詰まる問題」
ファンド出資者(LP)側からも「上が詰まる問題」について考えてみましょう。
ファンド出資者(LP)側は、ファンド代表者や主な担当者の経歴やトラックレコードをDDして、出資するに値する代表者やチームなのかという点をよーーく見ます。
運用期間が10年という長い期間に及ぶこともあって、途中で投げ出したりしないか、責任者がコロコロ変わらないかといったチームの安定性は当然チェックします。
実際に、私もPEファンドで働いていた際にファンド出資者(LP)に「チームの安定性は議論になるし、求める」と直接聞きました。
要は「上が詰まっている」状態をファンド出資者(LP)も求めているわけです(※2)。
最近何かと話題の某Wファンドの内部分裂・クーデター騒動みたいな「チームの安定性」が欠如する話はどう考えてファンド出資者(LP)サイドからしたら嫌ですよね。
※2
すべてのファンド出資者(LP)がこのように考えるわけではありません。KKRクラスの歴史や伝統があったり、キーマンをおかずに組織型で長年運営してきたPEファンドになってくると違う見方で物事を考えるファンド出資者(LP)もいらっしゃいます。今回の議論からはそういった歴史とブランドがあるファンドは除外して考えています。
優秀なPEファンドマン/ウーマンはどうなるのか
PEファンドに入社して、投資案件を担当し、回収も行い、パフォーマンスをあげてくると、出資者総会で投資先企業のプレゼンをしたり、懇親会で声を掛けられるようになってくるでしょう。
ファンド出資者(LP)達からも覚えてもらえるようになります。
もし、そんな大活躍なPEファンド(ウー)マンが退職するとなったら、当然こんなやりとりがなされることでしょう。
次は何をされるんですか?
実は、独立しようと考えていまして、相談させて頂きたいことがございます、、、
新しいファンドの誕生の瞬間です。
新興のファンドで「元○○出身者が立ち上げたPEファンド」というキャッチフレーズを見たことがある方も多いと思いますが、それは以前所属していたファンドで活躍した人がプロモーションした姿とも言えるでしょう。
ファンド運営会社で既存のパートナーに引き上げられてパートナーに就任するというルートもありますが、タイミングや運や相性の要素も加わってきてしまいます。
それであれば、投資案件を成功させてファンド出資者(LP)から「○○さんが独立してファンドレイズするなら検討させて頂きたい」と認めてもらう方を目指すべきですよね(もちろんめちゃくちゃ大変です)。
まとめ:PEファンドを志すならサラリーマンマインドを捨てよう
「PEファンドに入社してパートナーを目指そう」みたいな話は構造的にスジが悪いことを長々と説明させていただきました。
その一方でPEファンドの業務とは投資先の企業を通じて業界再編を仕掛けたり、異業種を組み合わせたりと外部の人ならではの発想で硬直した業界を動かすという創造力と高い視座を求められる仕事でもあります。
それにもかかわらず「上が詰まっている」みたいなサラリーマンマインドが見え隠れするようなことを言っていては、会社をまるごと買っちゃうようなダイナミックな仕事には向きません。
PEファンドを志す人は小さくまとまらずに、大きな志で物事を大きく捉えてチャレンジしてみてください。
以上「PEファンドで「上が詰まっている」のは当然って話」でした。
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大学卒業後、ファンド・コンサルで10年以上働いて独立しました。今は、個人でコンサルやりながらニッチなメディアの運営を行っております。詳しいプロフィールはこちら。
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