こんにちは。
突然ですが「イシュー」という単語ご存知ですか?
今回は、意識高い系の香りがプンプン漂ってくるこのワードではじまる名著『イシューからはじめよ』を取り上げます。
私は本のタイトルといろんな人のレビューから伝えたいメッセージは理解したつもりになって、あえて読まずに敬遠していました。
その一方で、大人から子供まで大人気の旬の漫画『アオアシ』を読んで、漫画を通じて伝えたいメッセージは「正しいイシューを特定すること」なんだろうと解釈しました。
そうなると点と点が繋がります。
『イシューからはじめよ』を『アオアシ』で解説するってイケる気がしてきた。前者はまだ読んでないけど😱😱
両方読んでいる人は少なそうだから、どっちかを知る機会になればいいかな。とりあえず読むか。— taiki (@taiki_chk) July 10, 2020
多くの方に背中を押されたら、「難しそうな本を漫画で解説する」シリーズをやらないわけにはいきません。
私も頑張って読みました。両方ともスゴイ本です。
『イシューからはじめよ』を読んでないけど、『アオアシ』を読んでいる方にはイシューとは何か考えるキッカケを、
『イシューからはじめよ』を読んだけど、『アオアシ』は読んでいない方には、イシュー攻略の具体的な事例を、
両方とも読んでない方には、スバラシイ2つの作品を知るキッカケを提供できればと思います。
人生が豊かになる要素が詰まっておりますので、ぜひお付き合いください。
『イシューからはじめよ』の基本情報
まずは基本情報に触れておきましょう。
『イシューからはじめよ』は30万部のヒット作であり、コンサルタントの必読書リストに入っているのを見たことがある方もいらっしゃるでしょう。
作者はマッキンゼーOBであり、脳神経科学者であり、現在ヤフーのCSOとしてご活躍の安宅和人さんです。
『イシューからはじめよ』はそんなスゴそうな方が書かれた本です。
「イシュー」ってなあに?
この本を読む上で避けて通れない「イシュー」というワードについて少し触れておきましょう。
この意識高い系ワード筆頭のような「イシュー」ですが、なんですかね。
私は「イシュー」というワード単品ではあまり意味がなく、「イシュー度」という比較感を持たせる事によって意味を持つ単語かなぁと考えています。
ちなみに、本著の中での定義は下記のAとBをみたすものです。
A) a matter that is in dispute between two or more parties
2つ以上の集団の間で決着がついていない問題B) a vital or unsettled matter
根本に関わる、もしくは白黒ハッキリしていない問題
何かの問題であることはわかったけど、抽象的でよくわからない?
そうですよね。これだと私もよくわからない。
もう少しわかりやすい言葉に置き換えると「解いた時に得られるインパクトが大きい問題」でしょうか。
いろんな問題があるけど、その中でも解けたら状況が一変するような大きな意味がある問題がイシューです。
まだ、スッキリしない人はアオアシの具体例が出てくるまで少し我慢していてください。
目次から構成を読み解く
『アオアシ』に入る前に、『イシューからはじめよ』の大枠を掴んでおく必要があります。
こういう時は、目次の構成をまずは抑えましょう。
なんだかドリブン祭りですね。。。。
ドリブンは深く考えずに「○○を起点に考える」「○○を基に考える」ぐらいの意味で捉えましょう。
例文:最近の「激務の心得」は漫画ドリブンの記事が多い。
超訳:最近の記事は漫画ネタばっかりだね。
話が脱線してきたので元に戻しましょう。
本の内容は、「序章から第1章」と「第2章から第5章」で大きく異なります。
「序章と第1章」は、イシューの設定についてであり、「第2章から第5章」は設定したイシューに対する解き方について書いてあります。
この本のメインメッセージは、名は体を表す通り、「イシューの設定こそが全ての起点である」です。
つまり、「序章と第1章」が本の伝えたいメッセージの90%を占めていて、この部分を抑えてしまえば作者の意図を汲みとったも同然です(もちろん、「第2章から第5章」にも良いことはたくさん書いてあります)。
序章と第1章に書いてあることは2つ
序章と第1章を読めば本のメッセージはなんと序章の最初に書いてあります。
「問題を解く」よりも「問題を見極める」
出所:『イシューよりはじめよ』 序章 常識を捨てる
この本の内容はこの一文に集約されています。
要は「いろんな問題があるけど、解けたら一番インパクトが大きそうな問題を見極めて解き始めなさい」ということです。
「問題を見極める」を念頭においた上で、『アオアシ』の力を借りましょう。
☆☆☆
そして、この本のもう一つのメッセージは「犬の道を進むな」でしょう。
「犬の道」とは「労働力を投下することによって問題を強引に解くゴリゴリのパワープレイ」です。
どんなに解くべき問題を見極めたとしても解き方が悪いとものすごく大変ということを「犬の道」と呼んでいます。
これも『アオアシ』の力を借りて後ほど詳しく説明しましょう。
「問題を見極めること」と「犬の道」の2つを意識しつつ、いよいよ『アオアシ』の登場です。
『アオアシ』で理解する『イシューからはじめよ』
ここからはネタバレ(7巻ぐらいまで)がありますのでご注意ください。
本当にネタバレの覚悟はできてますか?
覚悟あるみたいですね。それでは行ってらっしゃい!
そもそも『アオアシ』ってどんな話?
『アオアシ』の舞台はサッカーJリーグのユースチーム「東京シティエスペリオンFC」。
ユースとはプロチーム直属の下部組織です。言ってみればプロ養成所。
主人公の青井葦人がいろんな人に出会い、苦労しながら成長してプロサッカー選手を目指すお話です。
主な登場人物。
青井 葦人(アオイ アシト)
愛媛でサッカーをしていた中学生。
福田の誘いでセレクションを受け合格し、東京シティ・エスペリオンユース入団。
福田 達也(フクダ タツヤ)
「東京シティ・エスペリオンFC」ユースチーム監督。
自分の率いるチームで世界を圧倒することを目的としており、そのためには「育成」が最も重要だと思っている。
かつて、スペインリーグでも活躍した選手であったが怪我のため引退。
主人公であるアシトは、FW(※1)としてJリーガーになって親に楽をさせようと夢を見て中学卒業後に「東京シティ・エスペリオンFC」のユースチームに入団しました。
アシトはFWとしてゴールを量産していち早くプロの舞台にあがろうとギラギラしています。
その一方で、アシトに入団を進めた福田監督は、FWではなくアシトの能力を活かしてDF(※2)としてプロになってほしいと考えていました。
☆☆☆
※1 FW(フォワード)とは、サッカーのポジションの一つで最も相手ゴールに近い位置でプレーする選手
※2 DF(ディフェンダー)とは、ゴールキーパーの前、いわゆる最終ラインに位置し、主に守備を行う選手
アシトの視点でみるイシュー
アシト視点でユースチームに入団時におけるイシューとそれに対する仮説と根拠を見てみましょう。
シンプルです。
シンプルすぎてスライドがスカスカ、、、
これをスライドにする意味があるのか考えてしまいました。
根拠は「俺がなると言ったらなるから!」です。
ロジック以外はすべてまやかしである『イシューからはじめよ』的には笑っちゃうような根拠ですね。
もちろん、人生では「根拠のない自信」も必要な局面はありますが、「ロジックの積み上げ」とセットになってはじめて活きてくるものであり、「根拠のない自信」は単品だと脆いこと言うまでもありません。
アシトは典型的な中二病でした。
まぁ、アシトはこの時点ではまだ中3〜高1なのでゆるしてあげてください(笑)
アシトが進もうとしたのは「犬の道」
ちなみに、イシューと仮説はそのままとしてアシトはどうやってなろうとしたのでしょうか。
それはなんとも愚直。
練習や試合で大量の得点を量産していればいつかはプロからも呼ばれるだろうという大雑把なプランでした。
もちろん、重ねる得点に根拠や理屈はありません。
感性100%!
当然、ゴールの振り返りを求められても感性のみで行っているから再現性はゼロ。
これこそが、『イシューからはじめよ』でいう「犬の道」です。
「犬の道」と「よいイシューの条件」
ここで話を『イシューからはじめよ』に戻しましょう。
本の中で、価値のある仕事を「イシュー度」×「解の質」という2つの軸を使って定義しています。
解くことによって大きなインパクトが得られる問題に対して、いかに明確な回答を出すことが価値のある仕事です。
そして、答えを出す際に、筋道を立てて考えずに根性論で可能性のありそうなものをすべて潰しこむようなやり方を「犬の道」と呼んでいます。
実際に「犬の道」は、↓こんな感じで迷走してゴールにすら辿り着けないことがほとんどです。
それに対して、早い段階でイシューを見極め、解を磨き込んで明確な回答を目指すのを「人の道(仮)」(私が勝手に名付けた)と呼びましょう。
☆☆☆
アシトの実例解説に入る前に、「よいイシューの条件」についても考えてみましょう。
『イシューからはじめよ』の中で、よいイシューの3条件を掲げています。
よいイシューの3条件:
- 本質的な選択肢である
- 深い仮説がある
- 答えを出せる
「1.本質的な選択肢である」は答えが出るとその先の方向性に大きな影響を与えるかどうかです。
検討結果がさらなる検討をよんで問題を深化させなくてはよいイシューとは言えません。
「2.深い仮説がある」は、「確かにそれぐらい思考を積み上げて考えるとそうかも」と思えるような仮説を持っているかです。
誰もが1秒で同意するような稚拙な仮説では検討する意味がありません。
「3.答えを出せる」は、実際に問題に取り組んだら検討の末、答えを出せるのかです。
どんなに解けたらインパクトが大きな問題であっても実際に解けなかったら意味がありません。解けない問題はイシューですらないのです。
この「犬の道」と「人の道(仮)」、「よいイシューの3条件」を視点にアシトと監督のイシュー設定とその後のアプローチを見ていきましょう。
アシトのイシュー設定とアプローチ
アシトが設定していた「FWでプロサッカー選手になれるのか」はイシューとしては一見悪くなさそうな気もしますが、「よいイシューの条件」と照らし合わせて見るとどうでしょうか。
3つの条件の観点から考えると、深い仮説はなく、答えを出すのにユースの3年間掛かりそう(≒卒業後の進路)ですし、あまりよいイシューとは言えません。
3年後にプロからオファーがないという結果を突きつけられても厳しいですよね。それで大学行って、卒業後に運が良ければプロ。
プロ養成所としてのユースとしてはいかがなものでしょうか。
しかもアプローチはがむしゃらに得点を重ねる「犬の道」。
ひたすら辛いけど結果は出にくいデスロードでした。
監督視点のイシュー設定とアプローチ
一方で、監督の視点で考えてみましょう。
監督は、イシューを「アシトの強みを活かしつつ、チームに貢献できるポジションは何か?」に設定しました。
監督は、イシューに対する仮説を持っており、その根拠も十分持っていました。
これはよいイシューと言えるのではないでしょうか。
監督が結論を出した根拠はこちら。
根拠1:ボールが足下に収まらない
根拠2:敏捷性がない
根拠3:ショートスプリント力がない
この論理構成はどこかで見たことないですか。
激務の心得の熱心な読者なら覚えている方も多いハズ!
バーバラ・ミントで有名なピラミッドストラクチャーですね。
図解するとこんな感じ。
残念ながら、福田監督は「アシトがチームに貢献できるポジションはFWではない」という結論を出しました。
その一方で、アシトの強みにも着目しています。
強み1:ゴールへの嗅覚
強み2:視野の広さ
その上で、アシトの強みを最大限活かしチームに貢献できるポジションであるDFへの転向を進めました。
イシュー度と通った道を図解するとこんな感じですね。
監督はこのようにイシューを設定して、仮説を検証し、結論を出した上でアシトにDFへの転向を提案しました。
アシトはイシューを再定義して、これまでより質の良い仮説をユースチームの舞台で日々検証しています。
仮説検証の日々は、『アオアシ』本編で読んでくださいね。
まとめ:正しいイシューを特定することこそがプロフェッショナル
サッカー選手に限らず、選手生命の短いアスリートは「犬の道」に迷い込んだらあっという間に現役が終わってしまいます。
ユース世代(≒高校生)の頃から正しいイシューを特定し、「犬の道」を回避して、正しい方向に努力することを行っていたら、たしかにプロ選手が育成される気がしますよね。
年代やジャンルは違えどコンサルティングファームも正しいイシューを特定できずに「犬の道」で疲弊してばかりでは、パフォーマンスは評価されませんし、いずれ戦力外通告もされてしまうでしょう。
分野問わず、限られた時間の中で結果を求められるプロフェッショナルの世界では、正しいイシューを特定することこそが最優先事項であることは間違いありません。
ぜひ正しいイシューを特定して、「犬の道」に迷い込むことのない、生産性の高い豊かな人生をお過ごしください!
以上「『アオアシ』で読み解く『イシューからはじめよ』【犬の道回避】」でした。
オマケ
著者の安宅さんは、最近、副業としてYahooで安宅さんと働くギグパートナーの募集を行っております。
『イシューからはじめよ』の中で、こんなくだりがあります。
業界に精通した専門家をたくさん抱えているはずの一流の会社が高いフィーを払ってコンサルタントを雇うのは、自分たちは知りすぎているが故に、その世界のタブーや「べき論」に束縛されてしまい、新しい知恵が出にくくなっていることが大きな理由のひとつだ。
優秀であればあるほど、このような「知り過ぎ」の状態に到達しやすく、そこに到達すればするほど知識の呪縛から逃れられなくなる。
出所:『イシューからはじめよ』第1章 イシュー特定のための情報収集
安宅さんのような方でも自分のイシューは知りすぎてしまうために見えにくくなってしまうものです。
門外漢のフレッシュな脳みそで安宅さんのイシューを福田監督バリに特定できる方は応募してみましょう!!
あわせて読んでほしい
イシューを特定できたら、正義についても理解を深めると人間としての幅が広がります。マイケル・サンデルを『進撃の巨人』で解説しています。こちらも合わせて参考にしてみてください。
アオアシは現在20巻まで発売されています。このブログをここまで読んじゃうような方は好きになることは間違いありませんので、ぜひ手にとってみてください。
安宅さんの最新刊「シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成」も10万部突破でヒット中です。切り口の鋭さを味わいましょう。
大学卒業後、ファンド・コンサルで10年以上働いて独立しました。今は、個人でコンサルやりながらニッチなメディアの運営を行っております。詳しいプロフィールはこちら。
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