「オッス、オラ悟空。今日はコンサル業界の古典『企業参謀』についてわかりやすく解説すっぞ!」
はい、冗談です。
ドラゴンボールPEファンド解説が好評だった流れを受けて、悪ノリをされた読者の方から「企業参謀をドラゴンボールで解説してほしい」という無茶ぶりがありました。
そんなの読みたい人いるのかな?と思った所、想定以上に反響がありましたのでやることにしました。
企業参謀をドラゴンボールで解説するという無茶なリクエストが来たのですが、読みたい人います?
— taiki (@taiki_chk) March 10, 2020
企業参謀をドラゴンボールで解説するなんて本当に出来るんだろうかと思ったのですが、これが出来たんですね。
ドラゴンボールで説明出来ないことはこの世にはないと漠然と思っていましたが、確信に変わりました。
唯一無二、まだ人類がやったことのない試みとしてやってみたいと思います。ぜひ、お付き合いください。
企業参謀の基本情報
本題に入る前に、企業参謀とは何かについておさらいしておきましょう。
著者:大前研一
著者の大前研一さんは今更感もありますが、こんな人です。
大前 研一(おおまえ けんいち、1943年2月21日 – )
日本の経営コンサルタント、起業家。マサチューセッツ工科大学博士。マッキンゼー日本支社長を経て、カリフォルニア大学ロサンゼルス校公共政策大学院教授やスタンフォード大学経営大学院客員教授を歴任。現在、(株)大前・アンド・アソシエーツ創業者兼取締役、株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役社長等を務める。
出所:Wikipedia
まぁ、わかりやすく言うとマッキンゼー出身のコンサル業界のレジェンドです。
そんなレジェンドが30歳の頃に書いた本が企業参謀です。
今ほど情報化が進んでいない時代に、30歳という若さでこの本を書いたというだけでスゴイですよね。私には書けません。
名著だけど読まれていない?
古典としてコンサルタントなら知らない人はいないぐらい有名で、一家に一冊的な本ですが、皆さんは熟読されているのでしょうか。
極論:企業参謀を持っている人の80%は床屋の話までしか読んでない。
— taiki (@taiki_chk) April 13, 2020
残念ながら、最初の床屋の話あたりで脱落しちゃう方が多いようです。
世の中にはこの本を絶賛する方が多いですが、本当に読んだのでしょうか?
「床屋の話までしか読んでないけど、名著と言っている人!!前に出ろ!!」なんてことは言いませんのでご安心ください(笑)
そんな人達の為にこの記事を書こうと思いました。
床屋の話まで(≒最初の方だけ)しか読んでいなくても全部読んで理解した気になれるようにドラゴンボールの力を借りて説明しましょう。
そろそろ本題に行きますか。
企業参謀のメッセージ
この記事を書くために私は10年以上ぶりに企業参謀を引っ張り出してきて読み直しました。
若い頃に読んだなぁと懐かしみながらも、この話はドラゴンボールで言うとあのシーンだな的な思考をしながら読み直すという奇妙な読書方法でしたね。
きっとそんな読み方をしているのは世界中で俺だけだろうと思いながら読み進めていると以前読んだ頃よりは私自身が多少は成長していることもあり、企業参謀の核の部分がつかめました。
企業参謀を通じて大前研一が伝えたかったことはこんなことでしょう。
- 正しい問いを持ちなさい
- 世の中を解像度を高く見つめて、本質がどこにあるのかを突き止めなさい
- 一定の想定をおいて未来を予想しなさい(はずれてもいい)
- ↑これらを毎日続けなさい
異論はあるでしょうし、解釈の問題ですので議論の余地はあります。
今回はその解釈を議論したくてこの記事を書いているわけではありませんのでぶっ飛ばします。
このメッセージを中心にドラゴンボールに置き換えて考えてみましょう。
ドラゴンボールで説明する企業参謀
ドラゴンボールと言っても広範囲に及んでしまいますので、ナメック星編のベジータと想定して考えましょう。
最近、地球という星に行って、部下1名を失い、返り討ちにあって帰ってきました。
地球で仕入れた情報によるとナメック星のドラゴンボールを使うとなんでも願いがかなうらしいです。
しかし、その情報がフリーザに漏れてしまい、ドラゴンボールを求めて先にナメック星に行かれてしまいました。
この状況から企業参謀の教えに沿って考えていき、どうすれば状況を打開出来るかを戦略的に考えていきましょう。
正しい問いを設定する
フリーザに先を越されたベジータですが、感情的になって勢いでナメック星に向かったように見えても裏では状況を冷静に見つめて戦略的に考えていたと思われます。
ベジータは、ナメック星に行く途中で正しい問いとは何かを自分に何度も問いかけたことでしょう。
そこで導き出された問いは「ベジータはフリーザを倒せるのか?」です。
ここで、「ナメック星のドラゴンボールで願い事を叶えるにはどうしたらいいか」なんて問いを立てていたら迷走してしまいます。
私は企業参謀のメッセージの内の1つが、「正しい問いを持ちなさい」と解釈しました。
本の中では、「設問のしかたを解決策志向的に行うこと」というあたりで語っています。
解決策志向というと何のことかよくわかりませんが、要は「YES/NO」で答えられる質問を設定することです。
「ベジータはフリーザを倒せるのか?」であれば、YES/NOで答えられますが、「ナメック星のドラゴンボールで願い事を叶えるにはどうしたらいいか」はYES/NOでは答えられません。
ベジータは、ドラゴンボールを使うことが目的だったわけではなく、フリーザの下請け業者としてこき使われるのが嫌で、フリーザを倒して惑星侵略転売業(?)で優位なポジションを取りたいと考えたわけです。
問いに対して戦略的に考えて本質がどこにあるか見極める
問いが出来たら、ブレイクダウンして問題の本質がどこにあるかを見極めます。
まずは、企業参謀の中から戦略的に考えることとは何かについて書かれている部分をみてみましょう。
「戦略的」と私が考えている思考の根底にあるのは、一見混然一体となっていたり、常識というパッケージに包まれてしまっていたりする事象を分析し、ものの本質に基づいてバラバラにしたうえでそれぞれの持つ意味あいを自分にとって最も有利となるように組み立てたうえで、攻勢に転じるやり方である。
出所:企業参謀 第一部 第1章
戦略的思考入門 非線形思考の重要性
問い「ベジータはフリーザを倒せるのか?」に即して、起きている事象を本質に基づいてバラバラに分解して考えやすくする必要があります。
まずは、最初の要素として今回の主要登場人物であり、お互いが独立しているフリーザとベジータに分けてそれぞれ論点をあぶり出したほうが良さそうです。
本書の中でプロフィット・ツリーとして紹介されているフレームワークに近いですね。
出所:企業参謀 第一部 第1章
常に本質にせまるための方法
フリーザ側の論点
フリーザ側の論点を考える際に、ベジータなりに戦略的に考えた結果、フリーザ単品とフリーザ軍の問題を切り分けて考えたと思われます。
「フリーザ単体の強さがどれぐらいあるのか」
「フリーザ軍をどうやって孤立させて自分に有利な形で戦うか」の2つの視点です。
それぞれ考えみましょう。
フリーザ単体の強さはどれぐらい?
フリーザとの戦いを考える上で、一番最初に考えないといけないのはフリーザ自体の強さでしょう。
戦闘力53万とかいろんな噂がありますが、ベジータはそれらを鵜呑みにせずに思考を重ねました。
ベジータの思考を追いかけてみましょう。
まずスカウターが爆発する現象について疑問を持ちました。
スカウターはなんで爆発するんだ?
計測不能な場合はエラー表示だろ??
地球という星のサムソンというメーカーはある一定の条件を満たすと爆発するという噂は聞いたが、地球よりもずっと進んだ文明の我々がそんな設計ミスするか??
更にフリーザの戦闘力が53万って噂で聞いたことがあるが、そんな値スカウターで測れないぞ?
どうやって53万って測ったんだ?
↑実は戦闘力53万は自己申告!!
フリーザ軍の奴らはスカウターで想定外の戦闘力が表示されるとすぐに故障とか言ってたな、、、
そんな簡単に壊れるものか?
そもそもフリーザ軍は、深く物事を考えないバカなヤツが多く、見たくない現実から常に目を背けて思考停止に陥っている脳みそ筋肉野郎集団だったんじゃないだろうか。
↑ドラゴンボール史上スカウターが故障していたことは一度もない
ははーーん。わかったぞ!!
スカウターの爆発はフリーザがわざとそういう設計にして、強い戦士をあえて定量化させないようにして、幻想を膨らましたわけか。
フリーザの強さはマーケティングの賜物だな。強いのは間違いないが戦闘力53万はウソだ。
クソぉーー、なめやがって!!だが、なんとかなるかもしれないぞ。
こんな風に思考を重ね、フリーザの強さはなんとかなるかもしれないという仮説に辿り着きました。
図解するとこんな感じ。
さすがサイヤ人の王子!!
無謀なことはせずに、勝算が見えたからこそ挑戦したわけです。
フリーザを孤立させることは出来るか
ベジータは戦い方も考えていました。
目的はフリーザを倒すことであって、フリーザ軍の全滅でもなければ、1対1でフリーザに正々堂々と勝負して勝つことでもありません。
現にフリーザ軍をまとめて相手にせずに一人ずつ倒していきました。
1(フリーザ単体)対複数(ベジータ連合)のイメージがあったのでしょう。
ギニュー特戦隊が来た時は1対複数の構造が大きく崩れるのであせったのでしょう。
ギニュー特戦隊の招集があったからこそ、ベジータと地球人のアライアンスは形になりました。
ちなみにこの2×2の4象限マトリックスはこのブログを読むような方であれば見たことありますよね。
もちろん、本の中でも触れられています。
出所:企業参謀 第一部 第2章
製品市場戦略
ベジータ側の論点
フリーザ側の論点がクリアになってきたら今度はベジータ側の論点を考えます。
ベジータ自身(内部環境)と戦力調達(外部環境)に切り分けて考えました。
「ベジータ単品でどこまで強くなれるか」と「アライアンスによって一緒に戦ってくれる戦士をいかに増やすか」の2点でしょう。
ベジータ単体はどこまで強くなれるのか
フリーザの強さは意外となんとかなるレベルかもと思えてきましたが、それでも強いことには変わりはありません。
そうなるとベジータ自身がどこまで強くなれるかも見据える必要があります。
この際にベジータはフリーザよりも強くなれると結論を出しましたが、その根拠は3つありました。
サイヤ人は死の淵から蘇ると強くなる特性があるから、ドドリアやザーボンとの接戦を制して勝利を積上げていけばまだまだ伸び代はあるな。
伝説の超サイヤ人ってやつに覚醒すれば、決定的だろうし。
ドラゴンボールの力を借りてダメ押しだ。
今、この瞬間は勝てなくてもこれらを積上げていけばフリーザを超えることが出来る!
こんな風に自身が強くなるためのロードマップも描いていたことでしょう。
アライアンス
単独でナメック星に乗り込んだ時点では複数(フリーザ軍)対1(ベジータ)を回避することしか考えていなかったかもしれませんが、途中から1(フリーザ)対複数(ベジータ軍)で戦うことに切り替えはじめます。
戦力の外部調達はどの時点で思いついたのかは不明ですが、臨機応変に対応しました。
↑クリリンは1対複数の構図に気付きました
その結果、地球人・ナメック星人・サイヤ人という多民族連合軍を組むことが出来ました。
結論:読み違えはしたが勝利
ベジータ自身の超サイヤ人への覚醒やドラゴンボールの利用は計画通りには行きませんでしたが、ベジータ軍としては勝利を掴みました。
ベジータが戦略的に考えずに、なんとなくフリーザに突っ込んでいったら、こんな結末にはならなかったでしょう
このプロセスそのものが本書に「製品・市場戦略策定のためのプロセス」にも説明されています。
- 市場性の動的把握
- 内部経済の分析
- 競合状態の把握
- KFSに照らした強さ・弱さの客観理解
- 改善機会について仮説の抽出・評価
- 改善実施計画作成・実施
- モニター/必要な軌道修正
出所:企業参謀 第一部 第2章
製品・市場戦略策定のためのプロセス
この流れで、フリーザ(≒市場・競合、1と3)の分析、ベジータ(内部、2)の分析をして、計画を立てて(4,5,6)、実行に移しました。
そして、必要に応じて適宜修正(7)です。
サイヤ人の王子とは言え、フリーザの下請けとして現場仕事もやっていた強みが出ましたね。
ベジータが官僚的で融通がきかず、失敗をおそれるタイプだったらフリーザに戦いも挑まず、その後のストーリーもなかったでしょう。
ちなみに、官僚の融通が効かないことに対する苛立ちも企業参謀の中で触れられています。
既存の事業領域の定義のなかで、コストダウンをしたり、改良設計を行っていることだけが事業計画、と思っているような人は、もはや形骸化した大企業の一官僚にすぎない。このような考え方をいくら積み重ねても、世の中をリードするような先見的製品や事業というものは出てこない。
出所:企業参謀 付章
先見術 考えるヒント
フリーザは圧倒的に強いという既成概念にとらわれず、ファクトの積み上げから「フリーザの強さってウソなんじゃねぇ?」という仮説を導き出して実践したことは、ベンチャー企業が大企業のスキを突いて大きく業績を伸ばして成長するように痛快でしたね。
フリーザ軍の名もない思考停止戦士からは出てこない発想でした。
まとめ:床屋の話の先にも進んでみよう
正しい問いを持ち、ブレイクダウンして本質をえぐり出し、仮説を立てて未来を予想し、適宜修正をしたからこそのベジータ連合軍の勝利でナメック星編は幕を閉じます。
原作にはここまで細かくは描かれませんでしたが、ベジータはフリーザと戦う上で、こんな風に戦略的思考を積上げていたのでしょう。
この思考の積み上げこそが、企業参謀の教えなのです。
床屋の話あたりで挫折していた人も本棚の奥の方から引っ張り出してみてもう少し読み進めようと思っていたりしませんか?
内容的には40年以上も前に書かれているので古臭さを感じさせる部分もあるし、昭和感漂う上から目線の偉そうな文章に嫌気が差す人もいると思いますが、「この部分はドラゴンボールでいうとあの場面だな」的に何かに重ね合わせて読んでみてはいかがでしょうか?
逆にある程度キャリアのある方は、かつて論理と展開力に圧倒されたイカ漁船の話に「それは強引すぎない?」とツッコミつつ、ご自身の成長を実感しながら読み返してみても面白いかもしれません。
以上「コンサル本の古典「企業参謀」をドラゴンボールでわかりやすく解説する」でした。
オマケ
著名なビジネスマンも企業参謀を読んでいます。
QBハウスって、大前研一の「企業参謀」に出てくるアイデアをそのまま実行した、みたいな会社だよね・・ 「10分1000円」に負けたカリスマ美容師 http://news.livedoor.com/article/detail/4276330/
— 田端信太郎@田端大学 塾長 (@tabbata) July 31, 2009
人にお勧め本聞く前にまず古典をちゃんと読むべきです。
例えばビジネスやら経営関係一般なら、まず「人を動かす」「競争の戦略」「イノベーションのジレンマ」「企業参謀」などです。古典を読んだ後、そのジャンルの歴史が分かる本を読み、更に深く知りたい知識があれば専門本を数冊読みます。— tomo_8095 (@tomo_8095) November 23, 2018
個人的に好きなビジネス書
-企業参謀 大前研一
-チャイナ・インパクト 大前研一-確率思考の戦略論 森岡毅
-苦しかったときの話をしようか 森岡毅-Den Fujitaの商法 藤田田
-BUSINESS FOR PUNKS
-バフェットからの手紙
-ブラック・スワン— ピヨちゃん (@nogutaku) January 10, 2020
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話のネタとしても企業参謀を読んだことがないのはそれはそれとして寂しいので、床屋の話まででも構いませんので読んでみましょう。
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自己啓発の古典である『人を動かす』を『鬼滅の刃』で解説しています。名著だけど大作で読むのが大変な本ですが、これを参考にして概要を掴んでしまえば楽に読むことができますよ。
大学卒業後、ファンド・コンサルで10年以上働いて独立しました。今は、個人でコンサルやりながらニッチなメディアの運営を行っております。詳しいプロフィールはこちら。
コメント
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