コンサルでも投資銀行でも入社前の必修課題として簿記があげられます。
「英語は勉強するけど、簿記ってなんとなく受け付けない」とか「簿記はイマイチつまらん」って思っている人いますよね?
簿記って入社してから役に立つのでしょうか??
ここでは簿記が実際にどう役に立つのかを解説しましょう。
ここでいう簿記とは
本題に入る前に、簿記について定義しておきましょう。
ここでは、簿記3級とか2級という話ではなく、もう少し大きな「会計」という概念で簿記を捉えて議論しましょう。
ビジネスを行う上で簿記が直接必要になるというよりも、PL/BS/CFのいわゆる会計の知識が求められるようになります。
その会計を理解するには、簿記が必要な訳です。
簿記という小さな世界ではなく、会計というもう少し大きな枠で捉えて議論を進めましょう。
コンサル編
「簿記・会計とは何か?」との問に対して、超乱暴に私なりの解釈を言うとBSの概念を理解することです。
(会計士の皆さん、ごめんなさい)
PL(売上−コスト=利益)だけだったら、直感的に理解出来て難しくないですよね?
コンサルの世界では、PLが主役でありBSは脇役になりがちです。
トップライン系の案件では、ぶっちゃけ使わない
戦略コンサルの主なテーマは、事業戦略です。
どうやったら売上が上がるのかを必死に考えます。
会計的にはPLの一番上、「売上」です。
格好良く言うとトップラインってヤツですね。
このトップラインで議論をしている限り、簿記の概念はあまり役に立ちません。
3Cやバリューチェーンで物事考えたら、資産とかBSの概念はあまり話題に出てこなそうでしょ?
しかもお客さんの中心は、大企業であり、比較的資金には恵まれています(そもそも貧乏な会社はコンサルなんて使えませんし)ので、あまりBSを強く意識するようなテーマは出てきません。
だからといって全く使わないということはありません。
例えばコンビニ業界であれば、FCが多いのか直営店が多いのかでBSの様子が変わってきます。
小売業でも路面店中心の企業とネット主体の企業では当然BSが異なります。
簿記・会計の知識の出番が少ないだけで、役に立つ場面はあるのでサボらずにやりましょう。
製造業・小売業の業務改善では必要
コンサルでも事業戦略よりも少し地味(に見える)な業務改善案件においては、簿記の知識は必須になります。
在庫や原材料と言ったキャッシュを食うアイテムは簿記・会計知識が無いと議論が出来ません。
簿記・会計知識が無いと「この工場は大量に製品を作って製造原価下げて、無理やり黒字にしやがった!」みたいな怪しい行動が見抜けなくなります。
こういった案件は外資コンサルだと少ないですが、そんな仕事が来ないとは限りません。
1度ぐらいこの手の案件を経験しておいたほうが勉強にもなるので、そんな日に備えて簿記・会計を勉強しておきましょう。
投資銀行・投資ファンド編
投資銀行・投資ファンドの世界ではBSもPLも両方主役になります。
PL/BSからキャッシュフロー表を自分で作れるようでないと苦労しますよ。
簿記・会計の知識がないと仕事にならない
コンサルとは異なり、投資銀行・投資ファンドでは、BSフル活用です。
M&Aや資金調達は、BS系総合格闘技です。
特に会社を買ったり売ったりするM&Aにおいては、BSとにらめっこして、M&Aストラクチャーを描きます。
簿記・会計がわからないと仕事になりません。
会計士の資格を取れとは言いませんが、最低限の知識も無い状態では足手まといでリストラの対象になります。
必ずやりましょう。
私生活編
簿記・会計の知識があると消費活動が違って見えてくる
簿記・会計の知識は、私生活でも役に立ちます。
「このお金の使い方は費用性のモノか、それとも資産性があるモノか」
「これは30万円するけど、耐久年数と減価償却を考えると合理的か」
と言った感じで、お金を使ったらそれは何になるのかを意識すると無駄な消費が自然と減ってきますね。
更に進化させて、“退屈な飲み会に使う時間≒資産性なし”、“ジムでトレーニングに使う時間≒資産性あり”と言った感じで、時間の使い方を簿記・会計的に解釈することも出来ます。
また、恋人を選ぶ際にも
「コイツは見た目は良いが随分コスティーな女(男)だ」とか
「トップラインの派手さはないが、安定していて、コストも低くて素敵な女性(男性)」とか
「綺麗(イケメン)に見えてもBSの負債にはすんげぇ重たい親がいるからしんどいなァ」とか
「自分がいかに凄いかを盛って自慢する単なる粉飾決算やろうじゃないか」
と簿記・会計の知識を使って考える事が出来ます。
このぐらいまで簿記・会計が日常生活に入り込んでくるようになったら立派です。
日常生活において、簿記・会計の概念で物事を例えられるようになってくるとモノの見え方に多様性が出てきます。
こんな実用的なモノを勉強しないなんてもったいない。
PL/BS/CFの概念がごちゃごちゃな恥ずかしいツイートを見抜ける
会計の知識が正しく身につくとこのツイートの気持ち悪さに気がつくはずです。
生臭い話をすると、東京五輪決定直前の7年前に買った私の豊洲の某タワマン。額面ほぼ7500万円を、90%まで融資で融資額約6700万円のフラット35のローンで購入。
その物件が今、不動産査定サイトだと8500万円くらい? ローン残債は5700万円。なんで、差し引き2800万円の含み益。
— 田端信太郎@田端大学 塾長 (@tabbata) May 30, 2020
含み益の理解も違えば、金利や頭金を考慮せずに都合のいいところを切り取った無茶苦茶な数字ですね。こういった都合のいい数字の切り取り方を積み上げていくと詐欺まがいな金融商品が生まれます。
田端さんがツイートをバズらせる為にわざとツッコミどころを作った高度なネット芸人のボケの可能性もありますが、これはちょっとネガティブ。
田端さんの顧客(≒ファン?)からインテリ層が減ってしまわないか心配になります。
簿記がわかるとこういった不自然なツイートを見た時に見えてくる景色が変わってきます。更にもう一歩踏み込むと、このツイートを見て「さすがです!!スゴイ!!」と言っている人との距離感のとり方も自然と見えてくるでしょう。
簿記を勉強すると自分を守る知識が身につき、人を見る目が養える。人生が豊かになることは明らかですね。
簿記を褒め称えた偉人たち
人類史上最大の発明の一つと言われるのも(複式)簿記です。
こんな人類史上最大の発明を簡単に学べるのに、やらないなんて選択肢はあるの?
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
真の商人の精神ほど広い精神、広くなくてはならない精神を、ぼくはほかに知らないね。
商売をやってゆくのに、広い視野をあたえてくれるのは、複式簿記による整理だ。
整理されていればいつでも全体が見渡される。
細かしいことでまごまごする必要がなくなる。
複式簿記が商人にあたえてくれる利益は計り知れないほどだ。人間の精神が産んだ最高の発明の一つだね。
立派な経営者は誰でも、経営に複式簿記を取り入れるべきなんだ
出所:Johann Wolfgang von Goethe (1747-1832)「ヴィルヘルム・マイスターの修行時代」
ヴェルナー・ゾンバルト
資本主義の発達に対する複式簿記の意義はいくら強調しても強調し過ぎることはない。
当時の教科書は、簿記を「人間精神の発明した最も美しきものの一つ」と書いているが、たしかに複式簿記はガリレイやニュウトンの体系と同じ精神から生まれたのである。
これによって明確な利潤が観念できるようになり、抽象的な利潤の観念は資本概念をはじめて可能ならしめたのだ。
そうして固定資本とか生産費の概念が生まれ、企業の合理化の道を準備したのだ。
簿記組織によって営業の独立性が明確に意識される
出所:木村元一著「ゾンバルト 近代資本主義」1949.1 春秋社 pp.152
おすすめの本
いろんな本がありますが、会計をテトリスのように語る切り口がとっても印象的です。
あまり有名な本じゃないけど、入門には良い本。
簿記の本は適当に探してください。
結論:簿記は仕事もプライベートも豊かにするからやっておこう
簿記・会計の知識は仕事でも生きてきますし、物事の見方・視点という生きていく上でも役に立ちます。
簿記の2級資格を取る為なんていうくだらない理由のためではなく、もっと大きな視点を持って勉強しましょう。
人生が豊かになりますよ!
あわせて読んで欲しい記事
簿記の知識は財務モデリングに発展します。ポータブルスキルでもあるので、PEファンドに興味がない方にもおすすめです。
大学卒業後、ファンド・コンサルで10年以上働いて独立しました。今は、個人でコンサルやりながらニッチなメディアの運営を行っております。詳しいプロフィールはこちら。
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